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静岡地方裁判所 平成5年(行ウ)5号 判決

原告

原田忠雄

右訴訟代理人弁護士

清水光康

被告

静岡県相良町長楠田庄一

右訴訟代理人弁護士

牧田静二

右訴訟復代理人弁護士

石割誠

祖父江史和

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  原告の請求

1  被告が、原告の平成三年六月三日付浄化槽清掃業許可申請に対し平成五年七月一三日付でなした不許可処分を取消す。

2  被告が、原告の平成五年七月一二日付一般廃棄物処理業許可申請に対し同年七月二八日付でなした不許可処分を取消す。

第二  事案の概要

一  争いのない事実

1  本件各許可申請

(一) 原告は、浄化槽法三五条一項、相良町の浄化槽清掃業に関する条例(昭和六〇年相良町条例一一号。但し、平成五年同町条例七号による改正前のもの。以下「相良町浄化槽条例」という。)二条に基づき、平成三年六月三日付で被告に対し、相良町全区域を業を行おうとする区域として、浄化槽清掃業の許可の申請をした(以下「本件清掃業許可申請」という。)。

(二) また、原告は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)七条一項、相良町廃棄物の処理及び清掃に関する条例(昭和四七年相良町条例三三七号。但し平成五年同町条例一号による改正後のもの。以下「相良町廃棄物処理条例」という。)一一条に基づき、平成五年七月一二日付で被告に対し、相良町全区域を業を行おうとする区域として、一般廃棄物処理業の許可の申請をした(以下「本件処理業許可申請」という。)。

2  本件各不許可処分

(一) 被告は、本件清掃業許可申請に対し、平成五年七月一三日付で、原告が浄化槽法三六条二号ホ(その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者)に該当する者であるとして、これを不許可とする処分をし(以下「本件清掃業不許可処分」という。)、その頃原告にその旨の通知をした。

(二) 被告は、本件処理業許可申請に対し、平成五年七月二八日付で、右申請が廃棄物処理法七条三項一号(当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること)及び二号(その申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合するものであること)に適合しないものであるとして、これを不許可とする処分をし(以下「本件処理業不許可処分」といい、本件清掃業不許可処分と併せて「本件各不許可処分」という。)、その頃原告にその旨の通知をした。

3  本件各不許可処分に至る経緯

本件各不許可処分がなされるまでの経緯は次のとおりである。

(一) 原告は、平成二年一月初め頃、一般廃棄物処理業許可申請及び浄化槽清掃業許可申請に係る各申請書を、その添付書類とともに相良町の担当部局である保険衛生課に提出し、さらに同年二月二〇日過ぎころ同課から指示された添付書類を追加して提出したが、同月二七日付で、申請書の記載漏れ及び添付書類の不備を指摘されて、これを返戻された。

(二) 原告は、平成二年二月二八日、各申請に係る申請書を添付書類とともに、改めて提出したが、同年三月九日付けで、内容が正確に記載されていないとの理由で返戻された。原告は、同年三月一〇日、浄化槽清掃業許可申請に係る申請書を添付書類とともに提出したが、同月一九日付で、同様の理由により返戻された。

(三) 原告は、さらに平成二年六月二二日、浄化槽清掃業許可申請に係る申請書及び添付書類を提出し、相良町保険衛生課の同年七月五日付の指示に従って、その補正をしたところ、同年七月二〇日付で、被告名により書類不備を理由として返戻されたが、右返戻書には、現状下においては浄化槽清掃業及び一般廃棄物処理業の許可をする考えがない旨が付記されていた。原告が右申請書及び添付書類を再提出すると、同年八月六日付けで、被告名の書面により、現状下においては浄化槽清掃業の許可をする考えがない旨が再度通知された。

(四) その後平成二年九月一七日付で、相良町保険衛生課から原告に対し、相良町に提出されている浄化槽清掃業許可申請に係る申請書に関し、「汚泥を適切に処理する体制が整備されているか否かを確認できるもの(収集運搬業者との契約・作業計画・従業員等調査書)」を含む各書類を整備して提出するよう指示があった。さらに、同年一二月一五日付、同月二六日付及び平成三年一月二一日付でも、同課から原告に対し、同様に、「汚泥を適切に処理する体制が整備されているか否かを確認できるもの(作業計画・料金等を含む。)」を含む各書類を整備して提出するよう指示があり、右の各指示に係る書面には「収集運搬業の許可業者とよく話し合って下さい。」との付記があった。

(五) さらに、被告は、平成三年四月二四日付で、「厚生省関係浄化槽法施行規則第一〇条第二項第五号の規定による書類不備のため(浄化槽汚泥の収集運搬を行うことのできる一般廃棄物処理業の許可を持つ業者が、浄化槽汚泥の収集運搬を引き受けることを承諾したことを証明する書類)」との理由により、原告の浄化槽清掃業許可申請に係る申請書を返戻した。

(六) その後平成三年六月三日に、原告は、改めて浄化槽清掃業許可申請書を被告に提出して、本件清掃業許可申請をした。

(七) 相良町保健衛生課長は、平成三年九月一九日付で、本件清掃業許可申請に関し、原告に対して、相良衛生社との間で、収集料金、浄化槽清掃作業順序(収集日程を含む。)、契約書、その他について原案を作って協議するよう指示をした。右指示に係る書面には「相良衛生社には日新商事(原告の商号)と協議するよう依頼してあります。」との付記があった。

(八) 原告は、平成四年六月三〇日及び同年一二月二八日に、被告に対し、行政不服審査法三条に基づき、本件清掃業許可申請に対する許可又は不許可の処分を直ちにするよう求める趣旨の不服申立てをしたところ、被告から原告に対し平成五年一月一三日付の書面で、被告は原告に、浄化槽の清掃の結果引き出される汚泥等を適正に処理する体制(手段・方法)を整えて書類で提出するよう伝えたが、それが確認できる書類が未だ提出されていないので、その提出を待っているところであるとの内容の通知がなされた。

(九) 原告はさらに、平成五年三月二五日に、被告に対し、行政不服審査法三条に基づき、本件清掃業許可申請に対する許可又は不許可の処分を直ちにするよう求める趣旨の不服申立てをしたところ、被告から原告に対し、同年四月一三日付書面で、被告は原告に、浄化槽の清掃の結果引き出される汚泥等を適正に処理する体制(手段・方法)を整え、それが具体的に確認できる書類を提出するように重ねて指示してきたが、それが未だなされていないとの内容の通知がなされた。

(一〇) 原告は、平成五年五月一〇日に、被告に対し、第三者(後記二の1の(二)の(2)のアの柴山清子を指す。)に対しては、原告に対するのと異なり、浄化槽清掃業の許可が簡単になされたが、同人と原告とはどのように違うのか、等の質問を書面によって行ったところ、被告は原告に対し、同年七月五日付書面で、被告は原告に、浄化槽の清掃の結果引き出される汚泥等を適正に処理する体制を整え、それが具体的に確認できる書類を示すよう指示し、原告から右書面が提出されるのを待っているところであり、質問に対しては回答できない旨の通知がなされた。

(一一) その後平成五年七月一二日に、原告は被告に対し、一般廃棄物処理業許可申請書を提出して、本件処理業許可申請をした。

(一二) そうしたところ、被告は、平成五年七月一三日付で本件清掃業許可申請に対し本件清掃業不許可処分をし、また、同年七月二八日付で本件処理業許可申請に対し本件処理業不許可処分をした。

4  不服申立て

原告は、平成五年七月二六日に本件清掃業不許可処分につき、また同年八月二日に本件処理業不許可処分につき、それぞれ被告に対する異議申立てをしたが、被告は、同年八月二三日付で右各異議申立てをいずれも棄却する処分をし、その頃原告にその旨を通知した。

二  争点

1  被告は、本件各不許可処分が適法である根拠として、次のとおり主張する。

(一) 本件処理業不許可処分の適法性

(1) 一般廃棄物の処理は、本来市町村が処理しなければならない固有事務(平成六年法律第四八号による改正前の地方自治法二条三項七号、同法別表第二第二号(一一))であって、市町村は、その作成した一般廃棄物処理計画に従ってこれを処理しなければならないが(廃棄物処理法六条)、自らこれを処理し又は委託によって処理できないときは、業者にその事務を代行させることになる。そして、その場合に、市長村長は業者に対し、廃棄物処理法七条により一般廃棄物処理業の許可をすることが必要となるが、一般廃棄物処理業の許可については、市町村自体による収集又は運搬が困難であること(同法七条三項一号)及び市町村の定める一般廃棄物処理計画に適合すること(同項二号)を基準として、同法の目的に照らし、当該市町村の実情に応じて、自律的、専門的、技術的、政策的な判断を経るものであって、その判断に当たっては、市町村長に広範な裁量権が与えられている。

(2)ア 相良町は、平成六年四月に廃棄物処理法六条の一般廃棄物処理計画(し尿編)に相当する相良町生活排水処理基本計画(以下「基本計画」という。)を定めたところであるが、それ以前にあっても、相良町廃棄物処理条例六条に基づき、毎年度一般廃棄物処理計画を定めており、平成五年度においては、同年四月一日付けで平成五年度一般廃棄物処理実施計画(以下「五年度処理計画」という。)を定めて告示し、これに従って一般廃棄物処理の業務を実施した。なお、基本計画は、平成二年度に策定された相良町新総合計画を受けて立案検討が進められていたものであり、その基本方針は五年度処理計画の策定に当たっても考慮されていたものである。

イ 相良町における平成四年度のし尿処理実績は、①総人口二万七〇九八人、そのうち水洗化(合併処理浄化槽及び単独処理浄化槽)人口が一万八三三二人、非水洗化人口が八七六六人(そのうちくみ取り人口が八四八八人で、その余は自家処理人口)であり、②浄化槽汚泥収集量は六三九七リットル、し尿収集量は四六三八キロリットル、合計一万一〇三五キロリットルであった。

これに対し、五年度処理計画においては、昭和六二年度ないし平成四年度の実績に基づいて、平成五年度における浄化槽汚泥排出量を六五〇〇キロリットル、し尿排出量を五〇〇〇キロリットル、合計一万一五〇〇キロリットルと予定していた。

また、基本計画は、目標年度を平成一五年度として、昭和五八年度ないし平成四年度の実績に基づいて、目標年度における、①総人口三万人、そのうち水洗化人口二万六〇〇〇人(浄化槽人口二万三〇〇〇人のほか、公共下水道人口三〇〇〇人を含む。)、非水洗化(くみ取り)人口四〇〇〇人、②浄化槽汚泥収集量一万〇七〇〇キロリットル、し尿収集量二〇六四キロリットル、合計一万二七六四キロリットルと推計している。このうち、浄化槽汚泥収集量は水洗化の進展に伴い年々増加するが、し尿収集量と併せた合計収集量は平成六年度以降微増ないし横ばいとなる見込であり、平成一五年度に公共下水道の供用が開始されれば以後は減少していくものと予想される。

五年度処理計画及び基本計画において予定又は推計されているし尿等の排出収集量はいずれも過去の実績に基づいて算定されたものであって合理性を有しており、現に、平成五年度ないし平成七年度の実績は概ねこれと合致するものであった。

ウ 相良町内で排出されたし尿及び浄化槽汚泥(以下「し尿等」という。)は東遠広域施設組合(相良町ほか六町によって設けられた一部事務組合)の運営する東遠衛生センターにおいて処理されるが、その収集運搬は、従来から、その全量が廃棄物処理法七条一項の許可を受けている有限会社相良衛生社(以下「相良衛生社」という。)によって行われており、五年度処理計画及び基本計画における収集運搬計画は、右の収集運搬体制を前提とし、これを維持するものとしている。相良衛生社は、相良町のほか榛原郡御前崎町においても廃棄物処理法七条一項の許可を受けており、右両町一円を業務区域として営業を行っているが、その収集運搬能力は、五年度処理計画及び基本計画によって予定又は推計されているし尿等の排出収集量を十分賄うことのできるものであり、また、相良衛生社は、今日まで右の業務区域内のし尿等の収集運搬業務を支障なく行ってきており、その業務について住民から特段の苦情もなく、相良町の従前の一般廃棄物処理計画は概ね適正かつ順調に行われてきたものであるから、五年度処理計画及び基本計画における右収集運搬計画は合理的である。

(3) したがって、相良町におけるし尿等の収集運搬につき新規業者の参入を認める必要はなく、これを参入させれば、過度の競争による混乱が生じ、既存業者の経営の安定を損なうことになって、却って、住民の生活環境の保全と公衆衛生の向上を阻害する結果となりかねない。

被告は、かかる判断の下に本件処理業不許可処分をしたものであり、その処分は被告の裁量の範囲内であって、適法である。

(二) 本件清掃業不許可処分の適法性

(1)ア 浄化槽の清掃を行えば必然的に汚泥を生じ、その処理(収集、運搬、処分)が必要となるが、右処理を行うためには一般廃棄物処理業の許可を必要とし、したがって、浄化槽清掃業を営む者が自ら一般廃棄物処理業の許可を有してこれを行うか、または同許可を受けている他の一般廃棄物処理業者(以下、廃棄物処理法七条一項の許可を受けて営業をしている一般廃棄物処理業者を「七条許可業者」ともいう。)にその処理を業務委託する等の方策を講ずるしかないのであって、これらの方策を有しない場合においては、右汚泥等を放置するか、不法投棄するおそれがあるといわざるを得ない。そうすると、浄化槽清掃業の許可申請者が一般廃棄物処理業の許可を有せず、かつ七条許可業者との間で汚泥等の処理の業務委託契約も締結していない場合には、浄化槽清掃業の業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由があり、浄化槽法三六条二号ホ所定の事由があるというべきである。

昭和六二年五月一三日付厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長発衛環第七八号通知は、こうした考え方に立脚し、一般廃棄物処理業の許可を有しないものが浄化槽清掃業の許可申請をした場合においては、浄化槽の清掃の結果引き抜かれた汚泥を適正に処理する体制が整備されているか否かを確認するため、一般廃棄物処理業の許可を有する者に右汚泥の処理を委託する場合においては業務委託契約書の写しを、また浄化槽管理者が右汚泥を自ら処理する場合にはその旨を確認できる書類等の添付を求めることを認めている。

イ そこで、被告は、原告から本件清掃業許可申請があって以来、原告に対し、浄化槽の清掃の結果引き出された汚泥等を適正に処理する体制(手段・方法)を整え、それが具体的に確認できる書類を提出するよう再三にわたって指示してきたが、原告からその提出がなかったため、浄化槽法三六条二号ホ所定の事由があるものと判断して、本件清掃業不許可処分をしたものである。

(2)ア なお、後記原告の主張のとおり、被告は、一般廃棄物処理業の許可を有していない柴山清子(以下「柴山」という。)が七条許可業者との業務委託契約書を添付しないでした昭和五九年三月一二日付の浄化槽清掃業の許可申請に対し、昭和六〇年二月一日付で許可処分をし(有効期間同年二月一日から昭和六二年一月三一日まで)、さらに同人からなされた昭和六二年三月二〇日付の同様の許可申請に対し同年四月二〇日付で許可処分をした(有効期間同年五月一日から昭和六四年(平成元年)四月三〇日まで)。右の許可は、その後、平成元年四月一八日、平成三年五月一日、平成五年四月三〇日、平成六年四月二五日、平成七年五月一日、平成八年四月二二日に更新されて現在に至っている。

イ 柴山の昭和五九年の許可申請に係る申請書には、収集運搬及び処分方法について「この作業はやらぬが、もし必要の時は既存の第七条の許可業者に依頼する」と、また作業計画について「客の注文、契約により作業する」と記載されており、さらに昭和六二年以降の申請に係る申請書には、作業計画として「客の注文、契約により作業する。原則として、自家処理の農家が水洗浄化槽トイレに切り替えたものを契約する」と記載されていた。したがって、柴山の浄化槽清掃業の許可申請は、昭和五九年の申請当初から、汚泥の収集、運搬、処分の作業を要しない方式、すなわち自家処理をする者の注文に応じた契約により浄化槽清掃を引き受ける意図のものであることが明らかであるし、昭和六二年以降の申請については、その申請に係る浄化槽清掃業の作業内容が自家処理農家の浄化槽の清掃に限られる趣旨が明確となっている。そして、このように浄化槽から引き出した汚泥を自家処理する場合に限って営業を行うものとして、浄化槽清掃業の許可の申請があれば、原則として浄化槽法三六条二号ホに該当するものということはできないために、柴山に対し昭和六〇年二月一日付の許可処分がなされ、また柴山が実態として営業を行っておらず、したがって法令違反や不正行為の事実がないことも加わって、その後も反復して許可処分がなされてきたものである(但し、昭和五九年の申請に当たっては、右のとおり、「もし必要の時は既存の第七条の許可業者に依頼する」とされていたために、被告は念のため行政指導として、七条許可業者の承諾書の提出を求めたところ、柴山はこれに応じなかったが、柴山が汚泥を自家処理する場合に限って浄化槽清掃業の申請をしている以上、右承諾書の提出がなかったからといって、被告が不許可処分をすることはできなかった。)。

ウ これに対し、原告の本件清掃業許可申請は、一般の浄化槽清掃業を行うことを前提としてなされたものであることが明らかであるから、柴山の申請とは事情を異にするものである。

(3) したがって、本件清掃業不許可処分も適法である。

2  原告は、本件各不許可処分が違法である根拠として、次のとおり主張する。

(一) 本件処理業不許可処分の違法性

(1) 廃棄物処理法七条三項一号適合性

本件処理業不許可処分は、本件処理業許可申請が廃棄物処理法七条三項一号及び二号に適合しないことを理由としてなされたものであるが、相良町においては、一般廃棄物の処理は、町自ら又はその委託業者が行っているものではなく、七条許可業者である相良衛生社が独占的な形で代行処理をしているものであるから、本件処理業許可申請が廃棄物処理法七条三項一号の要件を充足することは明白である(名古屋地判平成三年一一月二九日・判タ七八九号一四一頁)。

(2) 廃棄物処理法七条三項二号適合性

ア 浄化槽清掃業者は、浄化槽の内部の清掃をした結果生ずる汚泥の運搬、処分もしなければ、実際上営業をすることはできない。そして、この汚泥の運搬、処分を行うについては、一般廃棄物の処理として廃棄物処理法七条一項による許可の制度の適用があり、浄化槽清掃業者が浄化槽清掃の結果生じた汚泥を運搬、処分しようとすれば、浄化槽清掃業の許可のほか、一般廃棄物処理業の許可をも受けなければならないこととされている(但し、昭和五三年までは許可を受けた浄化槽清掃業者が浄化槽に係る汚泥の収集、運搬又は処分を業として行う場合には、廃棄物処理業の許可を要しないものとされていた。)。しかし、浄化槽清掃業を営もうとする者が、浄化槽清掃業の許可及び一般廃棄物処理業の許可を併せて申請した場合、一般廃棄物処理業の許可申請は、既存の七条許可業者で足りる等の理由による市町村長の裁量権の行使であるとして不許可処分がなされることが多い。他方、このようにして一般廃棄物処理業の許可を伴わないこととなった浄化槽清掃業の許可申請に対しては、既存の七条許可業者に汚泥の運搬、処分を業務委託することを条件付けられるが、多くは競争関係にある既存の七条許可業者からそのような業務の受託を得ることは不可能を強いるものであり、結局は、不法投棄同様の違法な処理をするであろうとの蓋然性認定の下に、浄化槽法三六条二号ホ所定の事由に該当するものとして、一律に不許可処分がなされる傾向にある。

イ しかしながら、浄化槽の清掃は、本来それ自体で処理する機能を持つ浄化槽の維持管理に当たる事柄であって、市町村の自治事務とはされておらず、その清掃業の許可は、典型的な警察許可であって、浄化槽法三六条所定の一定の基準(技術基準の適合、欠格事由非該当)に達した者の申請に対しては必ず許可をしなければならないのであり、これについての裁量は認められない。

しかるに、浄化槽清掃業の許可申請が、浄化槽汚泥の収集、運搬及び処分を事業の対象とする一般廃棄物処理業の許可申請と併せてなされた場合において、もし、一般廃棄物処理業の許可につき市町村長の広範な裁量を認めた上で、右アのようにして、一般廃棄物処理業の許可申請のみならず、浄化槽清掃業の許可申請についてまで不許可処分がなされるものとすれば、一般廃棄物処理業の許可に係る法理により浄化槽清掃業を規制するのと同一の結果をもたらすことになり、浄化槽清掃業の許可の性質に反し、その許可制度を没却することになる。また、浄化槽清掃業にとって付随的業務である汚泥の収集、運搬及び処分の業務に対する裁量権の行使により、主たる業務である浄化槽清掃業の規制を実質的に変更することとなる点においても相当でない。むしろ、浄化槽汚泥の収集、運搬及び処分は本来市町村が責務を負う義務であるから、市町村は、浄化槽清掃業の許可をする場合には、その許可を受けた者が浄化槽の清掃をした結果生ずる汚泥につき、自らあるいは一般廃棄物処理業の許可を通じて遅滞なく処理し得る体制を整備しておくべきである。したがって、浄化槽清掃業の許可申請と浄化槽汚泥の収集、運搬及び処分を事業の対象とする一般廃棄物処理業の許可申請とが併せてなされた場合には、両申請に対し整合的な処分をすべきであり、市町村長は、浄化槽清掃業者が、浄化槽汚泥の収集、運搬、処分の業務を併せて行わなくとも、浄化槽清掃業務を支障なく行い得るような処理体制が整備されていない限り、従前の処理計画により浄化槽汚泥の収集、運搬、処分の業務が支障なく処理されていることだけを理由として、右一般廃棄物処理業の許可申請を不許可とすることはできず、右申請が他の要件を充足し、かつ浄化槽清掃業の許可申請がその要件を充足する場合には、両申請を併せて許可し、かつ浄化槽汚泥に関する一般廃棄物処理計画はこれに合わせて変更しなければならないものであり、その限りで、一般廃棄物処理業の許可に関する裁量は制約されるものと解すべきである(静岡地判昭和五九年四月二六日・公刊物未搭載)。

ウ さらに、原告が本件処理業許可申請において、直接収集、運搬及び処分の対象としたのは自らが浄化槽清掃の結果生じさせた汚泥に限定しており、これは一般廃棄物処理計画に適応する内容である。

エ したがって、本件処理業許可申請は、廃棄物処理法七条三項二号にも適合するものである。

(3) よって、本件処理業不許可処分は違法である。

(二) 本件清掃業不許可処分の違法性

(1) 本件清掃業不許可処分は、原告が一般廃棄物処理業の許可を受けておらず、浄化槽汚泥を処理する方策を有していないとして、原告に浄化槽法三六条二号ホ所定の事由があるという理由によるものであるところ、原告が本件清掃業許可申請と併せて行った本件処理業許可申請に対する不許可処分が違法であって、右申請に対し許可処分をすべきことは右(一)のとおりであるから、本件清掃業不許可処分は、その処分理由の前提を欠き、これが違法であることは明らかである。

(2)ア のみならず、被告は、一般廃棄物処理業の許可を受けていない柴山から、浄化槽汚泥の収集、運搬及び処分につき七条許可業者との業務委託に関する書面の提出をしないでなされた浄化槽清掃業の許可申請に対し、昭和六〇年来現在に至るまで、これを許可する旨の処分をしている。

そして、被告は、かかる柴山に対し浄化槽清掃業の許可をした理由として、柴山の申請に係る浄化槽清掃業の作業内容が、自家処理農家の浄化槽の清掃に限られ、浄化槽から引き出した汚泥を自家処理する場合に限って営業を行うものであって、汚泥の収集、運搬、処分の作業を要しないから、七条許可業者との業務委託がなくとも、浄化槽法三六条二号ホに該当しないと主張する。

しかし、被告の右主張は、次のとおり失当である。

イ 柴山の最初の(昭和五九年の)許可申請時の申請書には、「客の注文契約により作業する」とあげるだけで、「自家処理の農家が水洗浄化槽トイレに切り替えたものを契約する」との文言はないのみならず、収集、運搬及び処分については「既存の第七条の許可業者に依頼する」旨が明記されており、被告の主張するような、自家処理農家が浄化槽から引き出した汚泥を自家処理する場合に限って営業を行うものであって、汚泥の収集、運搬、処分の作業を要しないなどというような判断ができるものではなかった(柴山の二回目以降の許可申請時の申請書には「自家処理の農家が水洗浄化槽トイレに切り替えたものを契約する」とされているが、これも「原則として」そうするというにすぎない。)。このことは、最初の許可申請の際に、被告が柴山に対し、七条許可業者の承諾書の提出をするよう要求していることからも明らかであるが、それにもかかわらず、被告は、その要求に係る承諾書の提出がないのに、柴山に対し浄化槽清掃業の許可をしてしまったのである。

ウ また、廃棄物処理法一七条、同法施行規則一三条によれば、市街的形態をなしている区域内にあっては、ふん尿を肥料として使用するためには、化学処理をして使用する等の必要があるものとされており、そのためには、七条許可業者によって収集、運搬及び処分をすることが必要不可欠である。したがって、相良町の市街的形態をなしている区域(都市計画法上の市街化区域及びこれに準ずる区域をいい、相良町内に市街化区域はなくとも、これに準ずる区域は存在する。)においては、七条許可業者の業務の受託がなければ、ふん尿を肥料として使用することはできない。

エ したがって、柴山の申請に係る浄化槽清掃業の作業内容が汚泥の収集、運搬、処分の作業を要しないとの主張は事実を歪曲するものであり、柴山のした浄化槽清掃業の許可申請に対し、七条許可業者との業務委託を明らかにする書面の提出なくして、許可処分をした被告の立場からすれば、本件清掃業許可申請に対しても、原告が一般廃棄物処理業の許可を受けていないこと、あるいは七条許可業者との業務委託契約書等を提出しないことを理由として、浄化槽法三六条二号ホに該当するという判断をすることはできず、この点からしても、本件清掃業不許可処分は違法である。

三  したがって、本件の争点は次のとおりである。

1  本件処理業許可申請につき廃棄物処理法七条三項一号又は二号に適合しないとした被告の判断の適否(同項二号に適合しないとした判断の適否に関する前提として、一般廃棄物処理業の許可の申請が浄化槽清掃業の許可の申請とともになされた場合に、同号適合性の判断についての被告の裁量に制約が課されるか否かという点を含む。)

2  本件清掃業許可申請につき、原告に浄化槽法三六条二号ホに該当する事由があるとした被告の判断の適否(被告が柴山に対し浄化槽処理業の許可をしたことが、右の被告の判断の適否に影響するか否かという点を含む。)

第三  争点に対する判断

一  争点1について

1  本件処理業許可申請につき廃棄物処理法七条三項一号に適合しないとした判断の適否について

廃棄物処理法七条三項一号の「当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬」とは、市町村が自ら直接又は委託の方法により行う一般廃棄物の収集又は運搬をいうものであると解すべきところ、相良町内で排出されたし尿等の収集、運搬は従来からその全量が七条許可業者である相良衛生社によって行われており、相良町の定めた基本計画においても、右の収集運搬体制が前提とされ、これを維持するものとしていることは被告の自認するところであるが、それにもかかわらず、相良町が自ら直接又は委託によりし尿等の収集、運搬を行うことが困難でないとする主張立証は本件において全く存在しない。そうすると、相良町が自ら直接又は委託によりし尿等の収集、運搬を行うことは困難であるものと認められ、したがって、本件処理業許可申請は廃棄物処理法七条三項一号に適合するものであって、同号に適合しないとした被告の判断は同号の適用を誤ったものというべきである。

2  本件処理業許可申請につき廃棄物処理法七条三項二号に適合しないとした判断の適否について

(一) 廃棄物処理法によれば、市町村は当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画(一般廃棄物処理計画)を定めなければならず(同法六条一項)、また、一般廃棄物処理計画に従って、その区域内における一般廃棄物を収集、運搬、処分しなければならない(同法六条の二号一項)。これらの事務は、地方自治法上、市町村の固有事務とされている(平成六年法律四八号による改正前の地方自治法二条九項、別表第二第二号(一一))。そして、一般廃棄物処理計画は同法二条五項の基本構想に即して定めなければならず、また同計画には、厚生省令の定めるところにより、一般廃棄物の発生量及び処理量の見込み、一般廃棄物の適正な処理及びこれを実施する前に関する基本的事項、その他所定の事項を定めるものとされており(廃棄物処理法六条二項、三項)、さらに、市町村が行うべき一般廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準並びに市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を市町村以外の者に委託する場合の基準は政令で定めるものとされている(同法六条の二第二項)。

したがって、一般廃棄物の処理(収集、運搬及び処分)の事務は市町村の責務に属するものであって、市町村は、その処理につき、総合的かつ将来的な見地に立った一般廃棄物処理計画を策定し、かつ、同処理計画に従って、本来的には自ら又は委託の方法により一般廃棄物の処理を行うことが必要とされているものと解される。

しかしながら、市町村が自ら又は委託の方法によって一般廃棄物の処理をすることが諸般の事情により困難である場合においては、一般廃棄物の処理を業者に代行、委託させることとせざるを得ないところ、廃棄物処理法は、かかる場合に、市町村を代行して一般廃棄物の処理を業として行おうとする者は、一般廃棄物の収集又は運搬を行おうとする場合とその処分を行おうとする場合のそれぞれについて、当該市町村長の許可を受けなければならないものとし(同法七条一項、四項)、かつ、その許可申請に対し許可をするためには、いずれの場合であっても、当該市町村による一般廃棄物の処理が困難であること(同条三項一号、六項一号)、供用施設及び申請者の能力が所定の基準に適合すること(同条三項三号、六項三号)、申請者が所定の欠格事由に該当しないこと(同条三項四号、六項四号)のほか、申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合するものであること(同条三項二号、六項二号)を要件としている。すなわち、右のとおり、一般廃棄物の処理は市町村の責務に属するものであり、本来的には、市町村が一般廃棄物処理計画に従って自ら又は委託の方法によりこれを処理すべきものであって、業者がこれと並行して一般廃棄物の処理を営業として行うとすれば混乱が生ずることとなるから、これを一般的に禁止するとともに、市町村が自ら又は委託、代行の方法によって一般廃棄物の処理をすることが困難である場合に限り、その禁止を一部解除して、所定の要件を充たした業者が一般廃棄物処理の営業をすることを許可することとしたものであるが、その場合であっても、一般廃棄物の処理の事務が市町村の責務であり、市町村は、混乱なくその事務を達成しなければならないことはもとより、総合的かつ将来的な見地から策定した一般廃棄物処理計画を実現しなければならないことに変わりはなく、そのため、特に一般廃棄物処理計画に対する適合性が廃棄物処理業の許可要件とされたものであると解することができる。

以上のような廃棄物処理法の諸規定に鑑みれば、同法七条一項に基づく廃棄物処理業の許可の申請が同条三項二号に適合するかどうかは、市町村長において、当該市町村の一般廃棄物処理計画を基準として、当該申請に対し許可をすることが一般廃棄物処理の事務を混乱なく達成し、一般廃棄物処理計画の実現を図るために有用であるかどうかという見地から、技術的、政策的に判断すべきものとされているのであって、その判断については、市町村長の広範な裁量に委ねられているものと解するのが相当である。

(二)(1) 他方、浄化槽清掃業の許可(浄化槽法三五条)の申請に対し、市町村長が許可をするためには、供用施設及び許可申請者の能力が所定の技術上の基準に適合し、かつ許可申請者が所定の欠格事由に該当しないことが要件とされているが(同法三六条)、一般廃棄物処理業の許可の制度にあるような市町村長の技術的、政策的判断に基づく広範な裁量に委ねられるような許可要件は存在せず、右許可の制度は、不適格な業者を排除して生活環境を保全する上で支障を生じさせないようにすることを目的とするいわゆる警察許可の性質を有するものと解される。

もっとも、浄化槽の清掃の結果、必然的に生ずる汚泥を収集、運搬することは一般廃棄物の処理に当たるものであるから、浄化槽清掃業の許可申請者が自らこれを行おうとする場合には、一般廃棄物処理業の許可を受けることが必要である。

(2) しかるところ、原告は、浄化槽清掃業の許可申請が、浄化槽汚泥の収集、運搬及び処分を事業の対象とする一般廃棄物処理業の許可申請と併せてなされた場合においては、両申請に対し整合的な処分をすべきであり、市町村長は、浄化槽清掃業者が、浄化槽汚泥の収集、運搬、処分の業務を併せて行わなくとも、浄化槽清掃業務を支障なく行い得るような処理体制が整備されていない限り、従前の処理計画により浄化槽汚泥の収集、運搬、処分の業務が支障なく処理されていることを理由として、右一般廃棄物処理業の許可申請を不許可とすることはできず、その限りで、一般廃棄物処理業の許可に関する裁量は制約されると主張する。

しかしながら、以下のとおり、一般廃棄物処理業の許可の申請が一般廃棄物処理計画に適合するかどうかの判断が市町村長の広範な裁量に委ねられることは、浄化槽清掃業の許可申請が、浄化槽汚泥の収集、運搬及び処分を事業の対象とする一般廃棄物処理業の許可申請と併せてなされた場合においても同様であり、その場合に限って特に別異に解さなければならない理由はない。

ア 原告は、その主張の根拠として、一般廃棄物処理業の許可につき市町村長の広範な裁量を認めた上で、その裁量権の行使によるものとして不許可処分がなされ、一般廃棄物処理業の許可を伴わないこととなった浄化槽清掃業の許可申請について浄化槽法三六条二号ホ所定の事由に該当するものとして不許可処分がなされるものとすれば、一般廃棄物処理業の許可に係る法理により浄化槽清掃業を規制するのと同一の結果をもたらすことになり、警察許可たる浄化槽清掃業の許可の性質に反しその許可制度を没却することになると主張する。

しかし、浄化槽の清掃は必然的に汚泥を生じさせるのであり、これを自家処理するような場合を別とすれば、その収集、運搬及び処分という一般廃棄物の処理に属する業務を必要とすることになるところ、たとえ、それが浄化槽の清掃の結果生じた汚泥の処理であるとしても、一般廃棄物の処理である以上、その処理の事務が市町村の責務であり、市町村は、混乱なくその事務を達成しなければならないこと、また、その処理の事務を含めて当該市町村の一般廃棄物処理計画を実現しなければならないことに何ら変わりはなく、そうであれば、一般廃棄物処理計画に対する適合性という一般廃棄物処理業の許可要件の判断が市町村長の広範な裁量に委ねられることも、なお合理性を失わないというべきである。

他方、そのような市町村長の裁量判断により、申請者が、一般廃棄物処理業の許可を伴わないこととなった場合に、浄化槽清掃業の許可要件の存否、特に浄化槽法三六条二号ホ所定の事由に該当するかどうかは、申請者と七条許可業者との間の業務委託契約の有無やこれに対する評価を含めて、専ら、浄化槽法の規定に基づいて判断されるべき事柄であって、結果的に、浄化槽法三六条二号ホ所定の事由に該当するものとして、申請者に対し、不許可処分がなされたとしても、一般廃棄物処理業の許可に係る法理により浄化槽清掃業を規制したとか、警察許可たる浄化槽清掃業の許可の性質に反しその許可制度を没却するものとかということはできない。

イ 原告は、また、浄化槽清掃業にとって付随的業務である汚泥の収集、運搬及び処分の業務に対する裁量権の行使により、主たる業務である浄化槽清掃業の規制を実質的に変更することは相当でないとも主張する。

しかし、右の主張は、一般廃棄物処理業の許可に係る法理により浄化槽清掃業が規制されるとする右アの主張を前提とするものであって、右主張が理由のないことは右アに述べたとおりである。

のみならず、後記のとおり、浄化槽法三六条二号ホとの関係上、浄化槽の清掃の結果、必然的に生ずる汚泥を収集、運搬及び処分する体制を整えておくことが、浄化槽清掃業の許可の要件に当たるものとしても、その収集、運搬及び処分自体が右許可の対象である浄化槽清掃業の業務の内容に含まれないことは明らかである(同法一条四号、八号、九号)。したがって、汚泥の収集、運搬及び処分の業務を、同法所定の浄化槽清掃業にとって付随的業務に当たるとするのは誤りであり、これが付随的業務に当たるとすれば、それは浄化槽の清掃を業として営もうとする者にとってのことである。しかして、一般に、ある営業を行おうとする者が、そのために複数の許可等の取得を必要とする場合に、その一がその営業を行おうとする者にとって付随的業務に係るものであるからといって、それのみを理由として、その許可等についての行政庁の裁量権の行使が当然に制約されるものと解することはできない。したがって、この点からも、原告の右主張は失当である。

ウ 原告は、さらに、浄化槽汚泥の収集、運搬及び処分は本来市町村が責務を負う義務であるから、市町村は、浄化槽清掃業の許可をする場合には、その許可を受けた者が浄化槽の清掃をした結果生ずる汚泥につき、自らあるいは一般廃棄物処理業の許可を通じて遅滞なく処理し得る体制を整備しておくべきであり、そのような処理体制が整備されていない限り、従前の処理計画により浄化槽汚泥の収集、運搬、処分の業務が支障なく処理されていることだけを理由として、浄化槽清掃業の許可申請とともになされた一般廃棄物処理業の許可申請を不許可とすることはできないとも主張する。

しかしながら、浄化槽汚泥の収集、運搬及び処分が、一般廃棄物の処理に属するものであり、その処理の事務が市町村の責務であるとしても、廃棄物処理法上、市町村は、その処理につき、総合的かつ将来的な見地に立った一般廃棄物処理計画を策定し、かつ、同処理計画に従って、本来的には自ら又は委託の方法により、自ら又は委託の方法によることが困難である場合においては七条許可業者に代行させて一般廃棄物の処理をし、右一般廃棄物処理計画を実現しなければならないものとされていることは既に述べたとおりであって、そうであるとすれば、浄化槽清掃業の許可を受けた者(同許可は一般廃棄物処理計画への適合性が要件とされない。)が浄化槽清掃の作業をした結果生ずる汚泥を、右処理計画との適合性を問わず、直ちに又は遅滞なく収集、運搬、処分する体制を整えておくことが市町村の義務とされているものと解することはできない。

したがって、原告の右主張は、その前提において失当であって、これを採用することもできない。

エ 右のとおりであるから、浄化槽清掃業の許可申請が、浄化槽汚泥の収集、運搬及び処分を事業の対象とする一般廃棄物処理業の許可申請と併せてなされた場合において、一般廃棄物処理業の許可に関する市町村長の裁量が制約されるとする原告の主張を採用することはできず、この場合においても、当該許可の申請が一般廃棄物処理計画に適合するかどうかの判断は、市町村長の広範な裁量に委ねられるものと解するのが相当である。

(三) そこで、被告が、本件処理業許可申請につき廃棄物処理法七条三項二号に適合しないとした判断が、右の裁量の範囲を逸脱するものであるかどうかについて検討する。

(1) 証拠(乙第一四、第一五、第二二、第二四、第三六号証、第三九号証、証人森田明の証言)並びに弁論の全趣旨によれば、次の各事実を認めることができる。

① 相良町は、相良町廃棄物処理条例六条に基づき、毎年度(各年四月一日から翌年三月三一日まで)、一般廃棄物処理計画を定めており、平成五年度については、同年四月一日付けで五年度処理計画を定めて告示し、これに従って一般廃棄物処理の業務を実施した。

② 相良町においては、かねてから、同町において排出されたし尿及び浄化槽汚泥を、唯一の七条許可業者である相良衛生社が収集して、小笠町、菊川町、大須賀町、大東町、浜岡町、御前崎町及び相良町の七町によって設けられた一部事務組合である東遠広域施設組合が運営する廃棄物処理施設である東遠衛生センターに運搬し、同センターにおいて処分していた。五年度処理計画においては、東遠衛生センターから提供を受けた資料による昭和六三年度ないし平成四年度の排出量の実績値(但し、平成四年度分は、平成五年二月及び三月分のみ五年度処理計画策定段階において未集計であったため、平成四年二月及び三月分実績値で代替させた予測値)に基づいて、平成五年度におけるし尿排出量を五〇〇〇キロリットル、浄化槽汚泥排出量を六五〇〇キロリットルと予定し、その全量を七条許可業者(相良衛生社)が収集して東遠衛生センターに運搬し、同センターにおいて処分するものとされていた。

③ 他方、相良町は、平成六年三月に廃棄物処理法六条の一般廃棄物処理計画(し尿部分)に相当する基本計画を定めたが、平成五年四月当時はその立案中であって、その基本方針は五年度処理計画の策定に当たっても考慮されていた。基本計画は、目標年度を平成一五年度として、昭和五八年度ないし平成四年度の実績に基づき、目標年度における、総人口を三万人、そのうち水洗化人口二万六〇〇〇人(浄化槽人口二万三〇〇〇人のほか、公共下水道人口三〇〇〇人を含む。)、非水洗化(くみ取り)人口を四〇〇〇人、浄化槽汚泥収集量一万〇七〇〇キロリットル、し尿収集量を二〇六四キロリットル(計一万二七六四キロリットル)と推計するものである(なお、昭和五八年度ないし平成七年度の実績値、五年度処理計画による平成五年度の予定値及び基本計画による平成五年度ないし平成一五年度の推計値は、別表1記載のとおりである。)。

④ 基本計画においても、し尿及び浄化槽汚泥の収集及び運搬を七条許可業者(相良衛生社)が行い、その処分を東遠衛生センターが行う体制を前提とし、かつこれを維持すべきものとされている。相良衛生社は、相良町のほか御前崎町においても廃棄物処理法七条一項の許可を受けて、右両町一円を業務区域として営業を行っており、その平成四年度当時の収集運搬能力は別表2記載のとおりであって、右平成四年当時の収集運搬能力を前提としても、その最大収集運搬量は二万六八〇八キロリットル(相良町分)と算出され、五年度処理計画及び基本計画によって予定又は推計されているし尿及び浄化槽汚泥の排出收集量を十分賄うことができるものであるほか、本件処理業不許可処分当時まで右の業務区域のし尿等の収集運搬業務を支障なく行ってきており、その業務について住民から特段の苦情もなく経過していた。

以上の事実を認めることができる。

(2)  右(1)の認定事実に照らせば、五年度処理計画及び基本計画において予定又は推計されているし尿及び浄化槽汚泥の排出収集量は、いずれも過去の実績に基づいて算出されたものであって、その予定値又は推計値は、過去の実績値との比較において合理性を有するものであったと認められる(なお、平成五年度ないし平成七年度の実績との比較においても、多少し尿の排出収集量を過大に算出し、浄化槽汚泥の排出収集量を過少に算出した傾向が窺えるものの、右実績値に近似するものであったことが認められる。)。

また、右(1)の認定事実に照らせば、五年度処理計画及び基本計画は、し尿及び浄化槽汚泥の収集及び運搬を既存の七条許可業者である相良衛生社が行う体制を前提とし、これを維持すべきものとしていること、そして、相良衛生社は、右のとおり合理性を有するものと認められる五年度処理計画及び基本計画のし尿及び浄化槽汚泥の排出収集量を十分賄うことのできる収集運搬能力を有するのみならず、本件処理業不許可処分当時まで右の業務区域内のし尿等の収集運搬業務を支障なく行ってきており、その業務について住民から特段の苦情もなく経過していたことが認められる。そうであれば、し尿及び浄化槽汚泥の収集運搬につき、新規に七条許可業者を参入させる必要性は特に認められないだけでなく、仮に、これを参入させるとすれば、需要と供給の間に不均衡が生じて、各七条許可業者の経営基盤を損なうおそれや、過度の競争により収集運搬量に不必要な一時的増大が生じて、東遠衛生センターにおける処分に悪影響を及ぼすおそれが懸念されないではないから、五年度処理計画及び基本計画において、し尿及び浄化槽汚泥の収集及び運搬を既存の七条許可業者である相良衛生社が行う体制を維持すべきものとされていることについても、本件処理業不許可処分当時において合理性が認められる。

そうすると、仮に本件処理業許可申請において、原告の浄化槽清掃の結果生じた汚泥だけが直接収集、運搬及び処分の対象とされたものであるとしても、右申請が廃棄物処理法七条三項二号に適合しないとした被告の判断が、被告に委ねられた裁量の範囲を逸脱するものということはできない。

3 したがって、本件処理業許可申請が廃棄物処理法七条三項二号に適合しないとしてなされた本件処理業不許可処分は適法である。

二  争点二について

1  浄化槽の清掃を行えば必然的に汚泥が生じ、一般的には、これを収集、運搬して、処分することが必要となるところ、右の収集、運搬及び処分は、一般廃棄物の処理に当たるものであるから、浄化槽清掃業の許可申請者は、自ら一般廃棄物処理業の許可を取得するか、又は既存の七条許可業者とその収集、運搬及び処分について業務委託契約を締結する等の方法により、右汚泥を収集、運搬及び処分する体制を整えておくことが必要となり、もし、浄化槽清掃業の許可申請者において、かかる収集、運搬及び処分の体制を備えていない場合には、浄化槽から引き出した汚泥を放置するか、あるいは不法に処理するおそれがあるものとして、浄化槽清掃業の業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由があり、浄化槽法三六条二号ホ所定の事由があるというべきである。

2(一)  しかして、原告は、本件清掃業不許可処分がなされる前に、本件処理業許可申請をしたのであるから、本件清掃業不許可処分の時点で、自ら一般廃棄物処理業の許可を取得していなかったことは明らかである。

なお、本件処理業許可申請に対しては、本件清掃業不許可処分の一五日後に本件処理業不許可処分がなされたところ、原告は、本件処理業許可申請に対する不許可処分が違法であって、右申請に対し許可処分をすべきであるから、本件清掃業不許可処分も違法である旨主張するが、右処分が適法であると解すべきことは、右一のとおりであって、原告の右主張はその前提を欠き、失当であるというほかはない。

(二)  また、右第二の一の3の争いのない事実に、証拠(甲第一六号証の一、二、証人森田明の証言、原告本人尋問の結果)並びに弁論の全趣旨を総合すると、①原告は、本件清掃業許可申請をする前の平成二年一月から、浄化槽清掃業許可申請に係る申請書及び添付書類を相良町保険衛生課に提出して、その審査を受けていたところ(右の申請書等の提出及び審査は、申請行為に先立ってなされた事実上のものであって、いわゆる行政指導の一態様としての事前審査であるものと解される。)、この段階から、被告又は相良町保健衛生課の職員から、何度となく、浄化槽の清掃の結果生ずる汚泥を適切に処理する体制が整備されていることを確認できる書類、具体的には、七条許可業者が右汚泥の収集、運搬を引き受けることを承諾したことを証明する書類を提出するよう指導を受けたこと、②原告は、また本件清掃業許可申請をした平成三年六月三日の後にも、右申請に関し、被告から、七条許可業者である相良衛生社と協議して、右汚泥の収集、運搬に係る業務委託契約を締結するよう指示され、さらに、原告が行政不服審査法に基づき許可又は不許可の処分を求めた不服申立てに際しても、被告から、右汚泥等を適正に処理する体制(手段・方法)を整えたことを明らかにする書類の提出を待っている旨の不作為の理由が示されたこと、③原告は、平成三年二月四日に、相良衛生社を相手方として、右汚泥の収集運搬をすることに同意する旨の同意書の交付を求める調停を島田簡易裁判所に申し立てたが、同年三月二五日の調停期日に、調停成立の見込みがないとして不調となったこと、④そして、結局、原告から右汚泥の運搬、収集につき七条許可業者と業務委託契約を締結したこと、その他これを適正に処理する体制(手段・方法)を整えたことを明らかにする書類の提出がないまま、本件清掃業不許可処分がなされるに至ったこと、以上の事実を認めることができる。

右事実に照らせば、原告は、本件清掃業不許可処分の時点において、浄化槽の清掃の結果生ずる汚泥につき、七条許可業者と業務委託契約を締結し、又はその他の方法によって、これを収集、運搬、処分する体制を整えていなかったし、また、これを整えることができるとの見込もなかったことが認められる。

(三) 右(一)、(二)によれば、原告には、浄化槽清掃業の業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由があり、浄化槽法三六条二号ホ所定の事由があるというべきである。

3(一)  被告が、一般廃棄物処理業の許可を有していない柴山が七条許可業者との業務委託契約書を添付しないでした昭和五九年三月一二日付の浄化槽清掃業の許可申請に対し、昭和六〇年二月一日付で許可処分(有効期間同年二月一日から昭和六二年一月三一日まで)を行い、さらに同人からなされた昭和六二年三月二〇日付の同様の許可申請に対し同年四月二〇日付で許可処分(有効期間同年五月一日から昭和六四年(平成元年)四月三〇日まで)をしたこと、右の許可は、その後、平成元年四月一八日、平成三年五月一日、平成五年四月三〇日、平成六年四月二五日、平成七年五月一日、平成八年四月二二日に更新されて現在に至っていることは、被告の自認するところである。

しかして、原告は、かかる許可処分をした被告の立場からすれば、本件清掃業許可申請に対しても、原告が一般廃棄物処理業の許可を受けていないこと、あるいは七条許可業者との業務委託契約書等を提出しないことを理由として、浄化槽法三六条二号ホに該当するという判断をすることはできないと主張する。

(二)  証拠(甲第一二号証の一のヌ、第二八号証、乙第二七、第三〇ないし第三二号証、証人森田明の証言)並びに弁論の全趣旨によると、次の各事実を認めることができる。

① 柴山からなされた昭和五九年三月一二日付の浄化槽清掃業の許可申請に係る申請書添付の従業員等調査書には収集運搬及び処分方法として「この作業はやらぬが、もし必要の時は既存の第七条の許可業者に依頼する。」との、作業計画として「客の注文、契約により作業する」との各記載があった。

② 右申請を受けた被告は、昭和五九年九月二〇日付で柴山に対し、「従業員等調査書の収集運搬及び処分方法欄に「既存の第七条の許可業者に依頼する」とあるが、第七条の許可業者の承諾書を提出されたい。」との書面を送付して、七条許可業者(相良衛生社)の承諾書の提出を求めたが、柴山から右承諾書の提出がないまま、昭和六〇年二月一日付許可処分をした。但し、右許可処分に係る許可証には、生活環境の保全上必要な条件として「生活環境の保全上支障のないよう細心の留意をすること」と記載され、また、右許可証の送付書には「抜取った汚でいを放置するなど環境衛生上支障がある場合は、許可を取消すことがあります。」と記載されていた。

③ 柴山からなされた昭和六二年三月二〇日付の浄化槽清掃業の許可申請に係る申請書添付の作業計画と題する書面には「客の注文、契約により作業する。原則として、自家処理の農家が水洗浄化槽トイレに切り換えたものを契約する。」との記載があり、これに対する被告の同年四月二〇日付許可処分に係る許可証及びその送付書には、それぞれ右②と同様の記載があった。その後の柴山からの許可申請及び被告の許可処分についても右と同様の記載が存在する。

④ 柴山は、昭和六〇年二月一日付許可処分がなされて以来、現実には、浄化槽清掃の作業をまったく行っていない。

⑤ なお、原告の本件清掃業許可申請に添付された作業計画と題する書面には、「運搬、処分は町委託業者に委託する。浄化槽清掃後に出てきた汚泥は事前(作業開始予定日、時刻、氏名)連絡し計画収集して戴きます」と記載されていた。

以上の事実を認めることができる。

(三)  右(二)の事実関係に証拠(証人森田明の証言)を併せ考えると、柴山の昭和五九年三月一二日付の浄化槽清掃業の許可申請に対し、許可処分をした当時の事情は必ずしも判然としないが、被告は、右申請につき、収集運搬及び処分方法として「この作業はやらぬが、もし必要の時は既存の第七条の許可業者に依頼する。」との記載があったことから、柴山に対し七条許可業者(相良衛生社)の承諾書の提出を求めたものの、その提出がなかった段階で、右の記載により、浄化槽清掃の結果生ずる汚泥の収集、運搬を必要としない作業、すなわち、これを肥料として用いる形態で自家処理する農家との契約に基づく作業を専ら行うものと理解し、そうであれば、七条許可業者と業務委託契約を締結するなどして、右汚泥を収集、運搬、処分する体制を整えていなかったとしても、直ちに、柴山に浄化槽清掃業の業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由があるとすることはできないとの判断の下に、生活環境の保全上支障のないよう細心の留意をすることを条件とし、さらに、右汚泥の放置等に対しては許可の取消しをもって対処することがあるとの注意を付して、その許可処分を行ったこと、柴山の昭和六二年三月二〇日付の申請以降の浄化槽清掃業の許可申請については、申請自体から、原則として右のような自家処理農家との契約に基づき作業するものであることが明確となり、また、柴山が現実に浄化槽清掃の営業を行っておらず、したがって、右汚泥の放置や不法な処理の事実も存在しないことから、再度の許可処分及びその更新をして現在に至ったこと、原告の本件清掃業許可申請については、専ら右のような自家処理農家との契約に基づき作業するものであることを窺わせるような記載はなく、そのようなものとしては検討しなかったこと、以上の事実が認められる。

原告は、柴山の昭和五九年三月一二日付の浄化槽清掃業の許可申請からは、自家処理農家が汚泥を自家処理する場合に限って営業を行うものであって、汚泥の収集、運搬、処分の作業を要しないなどというような判断ができるものではなかったと主張するが、右申請に対し許可処分がなされた当時の事情は右のとおり判然としないものの、収集運搬及び処分方法についての文言のほか、昭和六二年三月二〇日付の許可申請において、原則として右のような自家処理農家との契約に基づき作業するものであることがより明確となったことに鑑み、昭和五九年三月一二日付の許可申請の際、既に右のような判断をなし得る事情が存在したものと推定することができるから、右主張は採用し得ない。

また、原告は、廃棄物処理法及び同法施行規則上、市街的形態をなしている区域内(都市計画法上の市街化区域及びこれに準ずる区域)にあっては、ふん尿を肥料として使用するためには、化学処理をして使用する等の必要があるものとされており、そのためには、七条許可業者によって収集、運搬及び処分をすることが必要不可欠であるとも主張するが、右にいう市街的形態をなしている区域が相良町内の全部又は相当部分を占めていることを認めるに足りる証拠はないから、右主張に係る法規制が存在することも、被告が、柴山の許可申請について右のような判断をした事実を左右するに足りるものということはできない。

(四)  そうすると、柴山のした浄化槽清掃業の許可申請に対する被告の許可処分は、原告に対する本件清掃業不許可処分とは異なる事情に基づく判断によってなされたものであって、右許可処分が存在するからといって、原告に浄化槽法三六条二号ホ所定の事由があると認められる本件清掃業許可申請に対して不許可処分をすることができないものとは認め難い。

のみならず、仮に、柴山のした浄化槽清掃業の許可申請が、七条許可業者との業務委託契約の締結等を伴うものでなかったことにより、柴山に浄化槽清掃業の業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由があるものと判断すべきであったとしても、それは、要するに、柴山のした浄化槽清掃業の許可申請に不許可事由があったことを被告が看過して許可処分をしたというにすぎず、これがため、柴山に対する右許可処分に瑕疵があるといい得たとしても、さらに原告の本件清掃業許可申請に対し、原告に浄化槽法三六条二号ホ所定の事由があると認められるにもかかわらず、許可処分をすべきであるという理由とはなり得ない。

4  そうすると、本件清掃業許可申請につき、原告に浄化槽法三六条二号ホに該当する事由があるとしてなされた本件清掃業不許可処分は適法である。

第四  結語

以上によれば、原告の本件請求はいずれも理由がない。

(裁判長裁判官曽我大三郎 裁判官石原直樹 裁判官杉本宏之)

別表〈省略〉

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